貢献賞 [コラム]
中国の会社・工場では「罰金制度」を導入しているところを,多く見かけます.日系企業も多少の抵抗感を持ちながらも,従業員にルールを守らせるために導入しておられるところが多いと思います.
つばを吐いたら罰金,などという「しつけ」的要素のものから,不良を作ったり見逃した作業員,検査員に罰金をするものまで,いろいろ聞いたことがあります.
しかし「罰金制度」はモチベーションを上げることはありません.罰金されるのがいやでルールを守るかもしれませんが,罰金により反省するよりは,「運が悪かった」と考える人のほうが多いのではないでしょうか.
我々もスピード違反で捕まった時「運が悪かった」としか考えません.もちろん次は捕まらないように気をつけますが,レーダーセンサを取り付けるなど,見つからない工夫をするのがオチです.
従業員のモチベーションを上げるという観点で考えると,「罰と恐怖」による罰金制度はメリットを見出せません.
勉強会メンバーが自社工場に導入している「貢献賞制度」は,罰金制度とはまったく逆の考え方です.
「貢献」といっても,特別なものを要求しているのではなく,単にルールを守る,休まずに出社をすると言うことだけです.
一ヶ月間ルールを破らず,休まずに出社すると80元の「貢献賞」がもらえます.
それを三ヶ月続けると「貢献賞」は160元になる.
更に三ヶ月続けると「貢献賞」は200元になる.
それ以降貢献賞を続けてもらっていれば,毎月200元ずつもらえる.しかし一度でもルールを破ったり,休んだりすると,貢献賞はゼロとなり,また初め(80元)から始めなければなりません.
この様な制度の下では,従業員は喜んでルールを守ろうとします.仕事を通して貢献しようという,本当の意味のモチベーションではないかもしれませんが,少なくともモチベーションを落とさずにルールを守らせることが出来ます.
この制度では毎月200元もらっている従業員は,休暇を取ってしまうと,当月の200元がゼロになり三ヶ月は120元,次の三ヶ月は40元の収入減になります.トータルで680元です.従ってムダに休暇を取らなくなる.
有給休暇も取らなくなってしまうそうです.従業員は有給休暇の買取も喜んで放棄します.
逆の見方をすれば,一回ルール違反をする・一日休暇を取ることにより,680元減収になるので,ある意味罰金制度と同じことなのですが,従業員のモチベーションという意味ではまったく逆の効果があるはずです.
人財育成勉強会では,毎回こういうものすごいノウハウを普通に議論しています(笑)
ご興味がある方は,ぜひご参加下さい.
モチベーション向上 中国では何を変えるか [勉強会議事録]
1.検討議題の目的
2.研究結果
社員に対して、『資格取得』を「技能修得や知識習得」の機会であり、「成果や評価」の原点である、という企業文化を作っていく事で社員のモチベーショ ンを上げていく。
具体的には、資格取得が昇格の順位を決める、他社でも必要とされる能力が身につく(成長する機会が広がる)という姿勢を会社側が示す。
資格取得後に他社へ逃げてしまう、というマイナス思考を捨てる勇気を企業が持つ事から始める。当社で学びの多くを得る機会を与えます。更に深く多くの学びを得たいという積極的人材は、貴方の能力は他社で上位職の地位を与えられ活躍の機会が与えられる、という人財育成精神の企業文化を作る。
人財育成精神とは、「学びたい」「もっと高い能力を得たい」ともがいている者に、手を差し伸べるのが教育の果たし得る場面であるという「孔子の精神」を原点にしつつ、「社会へ貢献」する大きな役割の一つに人財育成があるという「企業精神」を融合させたものをいう。
これは一つの企業で完遂できるものでもない。学びを得たいと考えている者が、その環境を選択する自由が人財育成を加速させるものである。企業もそういう人材の流動性が企業活性化の源と考えていく事が寛容である。
何故なら、学びを修了した人材より、学びを習得している時期がモチベーションの絶頂期であり、そういうポジティブな人材を活用していく仕組みが会社の成長そのものである。組織は不完全なほど活気がある。とにかく社員が必死に学ぼうとしている状態を作る事がモチベーション向上策となる。
優秀な人材から順に会社を離れる(辞めて違う会社に就職する)仕掛けが結果として社員のモチベーション向上に繋がる。
具体的には、それぞれの職位で能力充分に到達した人財は、その職位から離れその職位に安住しないしない仕掛けを作る。つまり、上位の職位で更に活躍する場の提供を行う事が更なるモチベーション向上の仕掛けとなる。この仕掛けは、最高上位の職位の方は、別会社へ移る事を意味するのである。
企業経営者からすると、優秀な人財確保に力を入れているのに、辞める仕掛け作りなど、アホめいた提案に映るものである。
しかし、事業もそうであるように、事業の核(金のなる木)だけでは将来の成長が約束されないと言われるように、企業は事業の革新を常に進めている。
現在、市場で認知(承認)されている事業が将来を保証するものではなくなってきている。だから変えるのである。
企業の組織構造も同じ事が言え、優秀なトップから順に入れ換え、新陳代謝を常に図れる仕掛けが必要である。未完成な組織こそが活性化の原点であり、継続的に会社目標を達成し続ける仕掛け作りなのである。
3.議論の背景資料
4.議論の抜粋
- 命令と服従というスタイルではなく、説得と納得という」スタイルにもっていくべき
- 新人には指示・命令が主である。モチベーションうんぬんという事ではなく、それが作業をうまく進める方法である。
- 指示・命令の乱用はよくない。
- 現地人事部長の指示と日本人の指示が食い違っている時に、社員間でトラブルになってしまう。
- 日本人が「決定権」を持っている。そう思っていなくても現地メンバーはそれに従ってしまう。
- 日本人の考え方だけで進めるのではなく、現地メンバーの目線で考える。
- 意見箱などで意見を吸い上げる事をやっているがこれだけでは不足である。
- マズローのいう下位の満足があって、上位の満足に繋がっていく。
- モチーベーションを上げるには、将来の姿(収入は・・・)を見せて上げる事。
- 何故働くのか、金銭だけのためか。
- 金銭は自分の将来を守る道具なのか。
- 収入という結果のみを捉えるのではなく、働くという考え方をスリ合わせる。
- 日本はY型人間(性善説)の存在を主流にしているが、中国はその逆でX型(性悪説)の存在を主流にして人間を見ている。
- 日本も中国もX型・Y型の存在は同じであり、その人に対する教育がそれぞぞれの存在を作っているだけ。
- 音楽の先生をつけてピアノの勉強をしている。
- ダンスパーティーを開いている。
- 罰金・罰則は効果がある。しかし、効果があるからと言ってそれら対策を止めると、元に戻ってしまう(罰金・罰則が維持の効果もある)
- そもそもルールを守る人はバカ正直であって、ルールを破って自己の利益を得る者が、優れている人と考えているのでは。
- 連帯責任にする。例えば、QQをやっていたら、その職場の仲間はインターネットが使えないようにする。そうすれば仕事が出来ずに迷惑をかける事になるので、そういった事はなくなる。
- 密告者が続出してしまう。
- 品質問題が発生した場合は罰金を取る、これはストライキの原因となる。但し、その職場責任者の減給は効果があるのでは。
- 品質問題は、公平・公正を保てるか。与えられている作業の難易度が違う。こうした評価の問題は、モチベーションに直結する。
- 会社の電話を勝手に使用した場合は、料金の3倍の金額を支払って貰うようしている。電話番号を調べれば、誰が使用しているかは判断できる。
- 罰金の目的は、悪さの再発防止です。必要なのは罰ではなく教育です。要するに、教育の施しようがない或いは教育を必要としていない場合に、再発防止策として罰金制度をとっているのでは。本来教育を行う事によって、再発防止すべき事です。
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論 [コラム]
元ネタはweblioです.
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
【英】:Herzberg's Motivation-Hygiene Theory
F.ハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論。ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者を動機づけ要因、後者を衛生要因と呼んだ。
動機づけ要因には、仕事の達成感、責任範囲の拡大、能力向上や自己成長、チャレンジングな仕事などが挙げられる。
衛生要因には、会社の方針、管理方法、労働環境、作業条件(金銭・時間・身分)などが挙げられる。
動機づけ要因を与えることにより、満足を高め、モチベーションを向上させることができる。一方、衛生要因に対して手を打つことにより、不満は解消されるが、そのことが満足感やモチベーションを高めるとは限らない。
モチベーション [コラム]
元ネタはweblioです.
モチベーション
【英】:motivation
目標に向けて行動を喚起する心理的エネルギー、行動を促す動機。俗にいう「やる気」。
人は、他の経営資源と異なり、その貢献度合いがモチベーションに左右される。モチベーションは、個人の置かれた環境や内発的な欲求によって形成される。何を重視するかについては個人差があるが、企業は個人のモチベーションに対して間接的に影響を与えることができる。
モチベーションの代表的なものに、「金銭的動機」「社会的動機」「自己実現動機」がある。
金銭的動機は、生活に必要な金銭を得たいという最も一般的・根本的なものだ。社会的動機は、一定の価値観を共有できる集団(組織)の中で社会生活を営み、その中で注目や評価を受け、権力を得たいという欲求から生じる。自己実現動機は、自己を成長させたい、社会的使命感を満たしたいという欲求から生じる。
第十回人財育成勉強会 [告知]
3月6日開催の人財育成勉強会は,「社員のモチベーション向上策、日本と何を変えるか」というテーマで,議論をしたいと思います.
私たちの勉強会では,従業員のモチベーションを上げる,というのが大きなテーマになっています.
第1回目の勉強会では,福利厚生で従業員のモチベーションは上がるか?
というテーマで議論しました.
しかしハーズバーグの衛生理論にもあるように,福利厚生だけでは本当にモチベーションを上げることはできないのではないでしょうか?
そういうわけで,今回はどのようにしたらモチベーションが上がるか,というテーマに真正面から取り組みたいと思います.
中国の工場・会社でどのようにしたら,従業員のモチベーションを上げられるか?
日本でうまく行った事例も中国でうまく行くとは限りません.
では何を変えるかべきか?
または何を変えてはいけないか?
という議論を進めてみたいと思っています.
第10回人財育成勉強会 テーマ:「社員のモチベーション向上策、日本と何を変えるか」 日時:3月6日(土) 14:00~17:00 場所: 東莞市南城区 新城市酒店15階小会議室 費用: 60元(会場費をご負担いただいています) モデレータ: 佐藤実氏
リーダのためのQC手帳 [コラム]
【品質意識編】
品質目標
働く意義
品質第一の心
仕事の優先順位
【実務編】
リーダの役割
1日の仕事
休暇前
休暇後
異常時
コミュニケーション
作業指導の仕方 | 【手法編】
QC七つ道具
5S
4M変動管理
5ゲン主義
ナゼナゼ5回
ホウレンソウ
ムダ取り改善
不具合再発防止対策
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やる気を出させる4つのスイッチ [コラム]
先日たまたま幼児教育で有名な横峯吉文氏のこんな文章を見つけました.
- 子供達は競争することが好き
- 子供は真似したがる
- 子供はちょっとだけ難しいことをやりたがる
- 子供は認められたがる
これって私達が直面している問題に応用できそうですね.
「作業指導書をどう浸透させるか」 [勉強会議事録]
作業指導書が守られない.どのようにしたら作業指導書が守られるか.
作業指導書が守られないのを放置すると,ルール・規定を守らないという悪しき風潮が蔓延する.
【問題状況】
- 見ていないと守らなくなる
監督者,管理者が眼を放すと守らない
- 初めは守るが,だんだん守らなくなる
面倒臭い所を,ショートカットする.記録作業をショートカットするので後からトレースができなくなる.ハンコ,サインが抜ける.
相談もなくアレンジする.
悪気があるわけではない.作業指導書を守らなかったときに何が起こるか想像力が足りない.
生産が間に合わない時に,作業手順書より生産台数を優先させる.
- 嫌がらせで守らない
辞めたいのに辞めさせて貰えない.
仕事,待遇に不満が有る.
フラストレーションの表れ
- 作業指導書を守ることにメリットがない
標準作業がどうしてそう決められているか理解できていない.
- 休み明けに守れなくなる
現場の監督職(班長・組長)の感性・感度が足りていない.
- 現場のルールが守られない
人の話が聞けない.
人を指導できない人が指導員になっている.
作業員に接するときにしてはならないこと,言ってはならない言葉を理解していない.
教え方をきちんと習得させなけらばならない.
【議論】
- 守れない手順になっていないか
技術者が机上で作業手順を決めてしまうと,作業がやりにくい,タクトタイム以内に終わらない,など守れない手順になってしまうことが有る.
不具合の再発防止対策として追加した作業など守れない手順になっていることが有る.
作業手順・方法の決定は,必ず現場と一緒にやる.
作業指導書の品証,技術,製造マネージャの承認が盲判となっている.各部のリーダが現場で,作業手順・方法を決める.各マネージャはそのリーダの仕事に責任を持つ意味で承認印を押す.
- 作業と作業指導書の乖離をなくす
作業改善をしたらすぐに作業指導書を改訂する.
手書きでよいのですぐ追記をする(正式改訂は後でも良い)
- 国民性,民族性のせいにしていないか
環境が変われば,やり方も変えるのが常識.それを国民性のせいにしてはならない.
ルール・規則を守らないのは中国人の国民性ではなく,彼らの処世術.
- 教えるより環境を変える
学習は,教える側よりも教わる側の熱意が重要.
ルールを守る環境を作る.上位者が見ていなくても,作業者同士で牽制が効く状態にする.
連帯責任制にすれば,作業者同士の牽制が効くようになる.
- 作業指導書が守れない理由をとことん調べる
ルール・規定を守らない者が悪い,という考えを捨て,指導者側に問題があると考えなければならない.
ルール・規定が守られない理由を徹底的に調べるコミュニケーションが必要.
- 優先順位を理解させる
納期と品質がコンフリクトする状況で誤った選択をしてしまう.これを避けるために優先順位を繰り返し従業員に刷り込む.
- 現場監督職の力量を上げる
納期と品質がコンフリクトしたときに,択一選択による解決ではなく,調和解を見出せる様に訓練する.
一般的に監督職(班長・組長)のための作業手順,作業心得が存在しない会社が多い.
監督職のために「QC手帳」のような仕事に対する心得を解説した小冊子を作ると効果があると考えている.
人材育成の4つの要素 [コラム]
人材育成には4つの要素があると考えています.
- 光:希望です.人は希望で育ちます.
- 水:水をやらねば育ちません.水をやりすぎると根が腐ります.
- 肥料:福利.肥料をやりすぎると根が焼けます.
- 土壌:企業文化,栄養を吸収する根を育てます.
植物は太陽の光を葉緑素に受け,光合成で養分を造ります.人にとって太陽の光は希望です.希望,目的・目標のある人材は自ら育ちます.
人材にとっての水は,仕事です.仕事を与えないと育ちません.仕事を与えすぎると腐ってしまいます.
肥料は必要ですが,与えすぎは根を弱くします.福利は不満足の解消はできても,満足度の向上には余り貢献しません.
土壌は健全な根を育てます.丈夫な根があれば少ない肥料でもしっかり養分を吸収するものです.共に育ち育てる環境を作ることが,良い土壌を作ることになります.
文責:林@クオリティマインド